福田家、82年目の挑戦。「紀尾井町福田家」4代目・福田貴之

2020年、新型コロナウイルスの影響によって生活のスタイルや働き方に大きな変化が起こりました。飲食業に携わる私たちにとっても大きな打撃となりましたが、こんな時こそ我々にできることがあるはずだと、さまざまな取り組みにチャレンジした1年になりました。創業82年目となる福田家の取り組みについて、4代目の福田貴之よりお届けします。

変化の中で生まれた、新しい取り組み

ここ1年でテレワーク・リモートワークが推奨され、「おうち時間」という言葉が聞かれるようになりました。今後、状況がある程度落ち着いたとしても「家で過ごす時間を充実させたい」という意識はずっと残っていくように感じております。「おうち時間」をテーマに、福田家にできることがあるだろうか――そこから考えを巡らせていきました。

2020年の4~5月、東京で緊急事態宣言が出ました。福田家では通常営業をストップし、お持ち帰り用のお弁当とお惣菜の販売を始めました。もともと、老舗の茶道具屋さんが開催するお茶会に仕出しをしていたこともあり、そのノウハウや経験はありましたので、さほど難しいことではありませんでした。

しかし、質のいい素材を厳選し、すべて調理場で手作りする我々のお弁当は、ひとつひとつ販売する販売形態には向きませんでした。品目も多く、仕込みの時間もかかります。10個、20個という単位で販売ができなければ大きなロスが生まれてしまいます。

「お弁当ではない、もっと違うことをしなければ」。料理長の松下を中心に調理場のスタッフがあれこれと考えて、最初に試作してみたのが鍋でした。2~3人前の出汁と材料をセットにし、箱に入れてお届けするスタイルです。

コロナ禍になる前年の2019年、福田家では新たなチャレンジとして、これまで扱ったことのなかった鹿肉を店のコースに加えました。広島県安芸高田市の猟師さんたちとの出会いがあり、鹿肉のおいしさを追求したコース料理が生まれたのです。今回の鍋セットを考える上でも、この鹿鍋から大きなヒントを得ることができました。

福田家からお届けする、季節の味

出来上がった鹿鍋の味をみて、まずは出汁のおいしさに驚きました。これならばご家庭でも福田家の味を、温かい状態で召し上がっていくことができるはずだ。季節ごとの鍋もいいかもしれない。春夏秋冬の鍋を、作っていったらどうだろうか――。こんなふうにアイディアが膨らみ、「福田家のお取り寄せ鍋」が形になっていきました。

鹿鍋に続き2021年の2~3月には宮崎県の養殖トラフグを使った「ふぐ鍋」、4~5月には京都の花山椒を和牛ロース肉に包んでお召し上がりいただく「花山椒鍋」をお届けしました。以前からつながりのある生産者だけでなく、鍋をきっかけに新たな生産者との出会いもたくさんありました。安全なふぐを食べてもらいたいという生産者さんの思いなどを聞くと、我々もしっかりとその思いをお客様に届けたいと強く感じました。

そしてこの夏にお届けするのが、熊本県天草の鱧と、秋田県から産直で仕入れた蓴菜を使った「鱧蓴菜鍋(はもじゅんさいなべ)」です。

天草の鱧は骨が柔らかく、脂のりも良いので使用しております。蓴菜は産直。収穫した翌日には届くので、鮮度抜群の品物です。若布も産直で磯香り、歯応えが良く、スープは、さまざまな野菜と鶏ガラをじっくり煮込んだ物で、自家製の濃厚なガラスープに仕上げました。

また、神奈川県三浦市松輪漁港で水揚げされた松輪サバを使用した「鯖寿司」や、素麺と汁、薬味をセットにした「酢橘素麺セット」も出来上がりました。

「鯖寿司」

素麺セットは、お店のコースで「締め」としてもお出ししていた素麺にスポットを当ててみようというところから生まれました。使用しているのは奈良県・三輪にある山勝製麺の全粒粉素麺。油を使わず、国産の小麦と塩のみで伸ばしている太めの麺です。汁は宗太鰹と鰹の2種類のかつおだしを合わせたもの。大葉、ミョウガ、ネギの薬味や岩手県の剣山ワカメ、秋田県の蓴菜、乾燥・粉砕した高知県四万十の青のり、徳島県のすだちをお好みで添えてお召し上がりいただけます。

そのほか「ばらちらし」と「太巻き」も、通年でご用意しています。これは2019年11月の天皇陛下の即位パレードの際に、何かお祝いできるようなものを出したいと思い、作ったものですが、おかげさまで好評をいただいております。

こうしたみなさまの支えをいただきながら、福田家スタッフたちもモチベーションを下げることなく、新しい挑戦に積極的に取り組んでくれています。大事にしているのは「自分たちが本当にやりたいことをやる」ということです。作りたくないものを無理に作ったり売ったりしても、本当にいいものはできません。自分たちが本当に届けたいもの、おいしいと思うものを、心を込めて作ること――これは福田家一同、これからも大切にしていきたいと考えています。

みなさまからのお声とともに

2020年から今年にかけての試みについては、ありがたいことにお客様から非常に喜んでいただくことができました。お取り寄せ鍋も、初めは反応をうかがうために20~30個の限定としていましたが、まもなく売り切れとなりました。

こういうご時世なので、チャレンジすることに対して後ろ向きに捉える方も少なく、概ね高評価をいただけたのかなと思っております。もちろん、日本料理屋としての範疇を逸脱しないことは大切ですので、お客様のお声に耳を傾けながら、今後も四季折々の福田家をお届けしていきたいと思っています。

そして、状況が落ち着きましたら、ぜひみなさまの大事な席にご利用いただけましたら幸いです。今後新しい展開も準備しておりますので、どうぞ楽しみにお待ちください。

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紀尾井町 福田家

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日曜日、祝日、土曜日(月1回) ※夏季・年末年始休業あり