福田家の調理場から #04 石川県 川端崇文さんの加賀れんこん

第4回となる今回は、石川県金沢市で加賀れんこんを生産している「蓮だより」川端崇文さんの圃場を訪れました。

加賀野菜のひとつとして有名な加賀れんこんですが、中でも平成18年から一代で蓮根作りに情熱をかけている川端さんのことは、かねてから気になっておりました。川端さんご自身が全日本食学会という場で加賀れんこんの魅力を世界へ向けて発信されていたことや、ミシュラン三ツ星でフランス・ロアンヌの名店「メゾン・トロワグロ」の巨匠がみずから視察に訪ねるなど、名だたる料理人の方々が注目している食材でもあったからです。

2016年に福田家の新料理長となった松下にこの話をしたところ、一般的な加賀れんこんよりもねばりが強く、非常に上質なものだということで、当店でも川端さんとのお付き合いが始まりました。この強いねばりを持つ加賀れんこんがどのように愛情をかけられて育っているのか。この度初めて実際に圃場へ足を運び、じっくりと見学させていただきました。

訪れたのは、金沢市湖南町。豊かな土壌の広がる石川県河北潟干拓地で、土作りからこだわり抜いて加賀れんこんを作っておられます。極寒の悪天候の中、氷点下の沼に入り、高水圧のホースを持って泥を取りながら収穫されていることに驚きました。

髪を金色に染めている川端さんは、私と同年代で、非常に真面目で熱い方。10年ほどサラリーマンとして働いた後に、一念発起してれんこん農家を始めたのだそうです。おいしいれんこんを届けるために弟さんと2人で朝4時に起床し、6時から8時間以上、ほぼ毎日収穫をしています。すでに手首が腱鞘炎を通り越して軟骨がなくなってしまったとのお話もお聞きしました。

とにかく想像以上に過酷で、重労働。そして質が高い商品作りと過酷な労働にも関わらず、決して高くはない値段で出荷されているのです。そのことに驚くとともに、あらためて尊敬の念を抱きました。川端さんに「もっと高い値段にしてもいいのでは」と聞くと、「おいしいれんこんをお届けできるのか一番ですから。でも、(価値を)わかってもらえて嬉しいです」とおっしゃっていました。

圃場を訪れたことで川端さんの加賀れんこんにかける情熱をひしひしと感じましたし、あの収穫の光景は強烈なインパクトとなって私の中に残りました。私どもも微力ではありますが、熱い情熱を持って努力されている生産者さんたちを、これからも応援していきたいと感じました。

料理長・松下俊一よりひとこと

冬の時期はこの加賀れんこんを使って、蓮根餅をお出ししています。加賀れんこんを餅状にし、中にはフグを蒸し、ほぐしたものしっかりと詰めました。さっと油で揚げたあと、さらに蒸すことによってモチモチの状態でお席にお届けしております。

通常、蓮根餅を作る際にはモチモチ感を出すために片栗粉などを加えることもあるのですが、このれんこんは強い粘りがあり、水っぽさが一切なく、そのままでももっちりとしています。ですから余計な粉なども使わず、素材をシンプルに調理することができます。

仕上げの味付けはポン酢餡、また上に乗せているのはれんこんの素揚げです。一度湯でてからでなくともカリッと揚がるのが川端さんのれんこんの特徴ですね。

独特のねばりがある川端さんの加賀れんこんを、ひと手間を加えることでさらにおいしくお召し上がりいただける一品です。

「蓮だより」川端崇文さんからひとこと

28歳で脱サラしてれんこん一本でやってきました。もともと実家が米農家をやっていたので、農業をやってみたいという気持ちは頭の片隅にはあったんです。お米で稼げる時代ではなかったので、安定感のある根菜なら…と着目しました。自分の地元でもあるこのあたりはれんこんの産地でもありました。昔ながらのどろのついたれんこんが各地にあったり、うちでも昔祖父が家庭菜園レベルで作っていたりしたので、れんこんをやってみようと。

サラリーマンの仕事にも行き詰まりを感じていたときだったので、汗流して、顔どろんこにしながられんこん作りに没頭してみたら、どハマりしたんです。この河北潟という場所のことも初めて知り、れんこん農家さんの作業を実際に見に行きました。れんこん畑って1500坪というものすごい広さなんです。そこで青空の下でもくもくとれんこんを掘る様子を見たときに、「これしかない!」って決めてしまったんですね。子どもも2人目がお腹にいたので当然家族には大反対され(笑)、借金もして背水の陣からのスタートでした。

れんこん一本でやってきて、これほどいろいろな人と繋がれるとは思ってもいませんでしたね。福田さんとは同い年というご縁もありますし、加賀れんこんという伝統野菜を作る上でも、魯山人ゆかりの伝統あるお店が昔から大事に繋いでこられたご縁の中に、うちのれんこんを結びつけていただけていることをとても光栄に感じています。

写真左:「蓮だより」川端崇文 様
写真右:紀尾井町 福田家 福田貴之

紀尾井町 福田家

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